わたしのメルヘン
夜中など
眠れないときに詩をそらんじることができればどれだけ救われるだろうかと思いました。そうして、
❝秋の夜は はるかの彼方に……❞と
「一つのメルヘン」を思い浮かべてはみましたが、どうしても、川床に水が流れゆくという終末までたどり着くことができませんでした。
詩集を読みなおすと、水が流れるまでにはまず、ただの石ばかりの河原に陽がさらさらと射し、次いでその石に蝶が止まり影を落としたまま、去るとようやく、水がさらさらと流れゆくということでした。
この詩をならった制服のころのわたしは、ただ、さらさらという言葉と、かわいいような切ないようなタイトルをばかり気にかけていました。
この夜が明け
窓際に飾っている花をみると、その細かな花びらがひらひらと落ちていきました。そのようすは、まるで、わたしが思い出そうとしてこぼれていった詩句のようでしたので、そこに、わたしのメルヘンが広がっていきました。