別の物語のなかのひとたち
道を歩いていて、ひととすれちがうとき、このひとも誰かの胸を焦がせているのかもと思ってひどく感動することがある。私にとってはただの通りすがりだけれど、誰かにとっては、こんな風にすれちがう瞬間さえ願われているひとなのかもしれない。そのひとの魅力を知らずに私は通り過ぎるだけで。そして私のなかにもまた、会いたい顔があるわけで。
声になる前に会いにきて
別れも自然のなすことだ。雨や夕日とおなじように。
別れるべくして出会うひともいないし、
だからといって
出会うべくして出会うひともいないんだろうな。
一切合切、すべては自然のいたずらなんだ。
だから、こんなにも大好きになってしまった。